戻る NO20 うぐいす長者 NO21 おむすびころりん

むかしむかし、お茶や小間物を売って歩く男がおった。
冬の寒いある日のこと、この日は、ちっとも売れんかった。
とぼとぼさびしい山道を歩いているうちに、男は、いつのまにやら
竹やぶの中にいた。どうやら道にまよってしもうたらしい。
うす暗い竹やぶをぬけると、明るい梅の咲く場所へ出た。
すると美しい四人の娘が梅の木のかげからあらわれた。
男は娘たちの案内で家へとつれていかれた。そこは男が
今まで見た事がないような四つのおくらがある立派な家じゃった。
家につくと娘たちの母親が出迎えてくれた。
「今夜はゆっくり泊っていってください」そういって男の持っている
品物をぜんぶ買ってくれた。次の日、母親は男に、こういった。
「ここは女だけの家ですからゆっくりしていって下さい。
それに、娘が四人いますから、だれぞの婿になって下さい。」
なんやら夢のような話じゃた。男はこうして長女の婿になった。
やがて冬も終わり、あたたかな春がやってきた。
ある日母親が男に言った。「娘たちとお花見にいってきます。
お留守番をお願いします。退屈したら
くらでもみていてください。
でも
四つめのくらはけっして開けてはいけません。」
女たちがでかけた後、たいくつになった男はくらの中を
みることにしました。
一番目のくらを開けると
足もとに打ち寄せる波。まぶしい青空、
白い入道雲、
真夏の景色じゃった。
二番目のくらを開けると赤や黄色に色づいた木々。
たわたわに実った柿。美しい
秋の景色じゃった。
三番目のくらを開けるとそこは一面の雪げしき冬じゃった。
そして
四番目のくらの前にきた男は母親が出かけに言った
言葉をはっと思いだした。開けてはいけないといわれると、
なおみたくなった男は母親との約束を破りとうとう開けてしまった。
そこはさらさら流れる小川。梅の木にはうぐいすがとびかっている。
「ホーホケキョ、ホーホケキョ」うつくしい声で鳴いていた。
男のすがたを見るとうぐいすたちはぴったっと鳴くのをやめ
どこかへとんでいってしまった。すると、まわりの景色が
す〜っと消え美しい庭は草やぶにかわり、男はぽつんと
一人立っていた。そこへ母親の声がきこえてきた。
「あなたは約束をやぶって、四番目のくらを開けましたね。
私たちはここに住むうぐいすだったのです。きょうは日よりが
いいので、みんなもとのすがたにもどって遊んでいたのです。
その姿を見られたからには、も〜ういっしょに暮らすことは
できません。さようなら〜」
男はしょんぼり山をおりていった。まだまだ寒い冬じゃった。