戻る NO16 たぬきと彦市(ひこいち)  NO17 貧乏神と福の神へ


むかしむかし、ある村に彦市どんという、たいそう
ちえのはたらく男がすんでおりました。おっかさんと
二人で毎日畑へ出かけては、せっせとはたらいて
おりました。彦市どんの家のうら山にはいたずら好きの
たぬきがすんでおって、旅人を待ちぶせしては、
いたずらをしてはよろこんでおりました。でも、たぬきは
彦市どんをなんとかしてだましてみたいと、いつも
思っていました。そこであるばん、旅人にばけて
彦市どんの家にやってきました。戸を開けた彦市どんは
うら山のいたらずらずきのたぬきにちがいないと
思いましたが、知らぬ顔で家へまねきいれました。
「ところで、彦市どんには、こわいものなんて、
な〜んもあるめえなあ?」
彦市どんはたぬきをからかって
やろう〜と考えこむふりをしました。
「う〜ん一つだけあったよ。じつはまんじゅうが
こわいんじゃよ。」
「え〜っ、まんじゅうがこわい
だなんて。はははっ、」
「おら〜まんじゅうと聞いただけで体がふるえてくるだ。あ〜、こわい。」
「うひひ〜こりゃいいことを聞いちゃったぞ〜」

たぬきはよろこんで山へ帰っていった。
つぎの朝彦市どんが目をさますとほかほかの
まんじゅうが山ほどつまれておった。
「おっかあ、うめ〜えまんじゅうがとどいたぞ〜。」
彦市どんとおっかさんは大よろこびでまんじゅうを
ぱくぱく。ようすを見にきたたぬきはかっかと
おこりました。
「くやしい!だましたな。このしかえしは
きっとするからな。」
そして何日かがすぎたあるばん
たぬきは村じゅうの石ころをひろいあつめて、
彦市どんの畑にほうりこんだのです。

「あれあれ、たいへんじゃあ」
おっかさんは
びっくりしましたが、彦市どんはたぬきがしたことだと
わかっていたので、すこしもおどろきません。
彦市どんはわざと大きな声でおっかさんにいいました。
「のう、おっかあ〜石ごえ三年というて、
ありがたいことじゃのう。これがもしも牛のふんじゃったら
えらいことじゃった。」
彦市どんをこまらせようして
やったことがまたまたよろこばせてしまった。
たぬきのくやしがること、くやしがること。
畑の石を運び出して、村じゅうの牛小屋に
しのびこんでせっせと牛のふんを、集め彦市どんの
畑にうめておきました。たぬきのまいた牛のふんは、
とてもよいこやしになって、秋にはみごとな作物が
どっさりとれました。
「おら〜どうしても彦市どんにはかなわね〜くやしいよ〜」
作物の実った畑をみてくしがるたぬきを、彦市どんが
よびました。
「お〜い、たぬきどん。おすそわけじゃ。
おまえのまいたこやしがよ〜うきいて、おいしく、
でか〜く育ったぞ〜」
たぬきは、じぶんのおかげで
おいしく実ったとうもろこしを、うまいうまいと
食べました。それからは、たぬきはいたずらをやめて、
うら山でおとなしく、くらしたんじゃとさ。